
ES調査とは何か。また企業がES調査をするべき理由について、今回の記事で紹介します。
ES調査とは何か
ES調査とは「従業員満足度調査」のことで、従業員満足度(Employee Satisfaction)の頭文字をとって、ES調査と呼ばれています。
簡単に言えば“自社の従業員がどれだけ現在の状況に満足しているのかを調査すること”です。
※従業員満足度については、以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。
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この「従業員満足度」は、働きやすさの指標とされており、これが高ければ定着率向上や生産性の向上、ひいては企業の業績向上につながる大きなポイントです。
逆もまた然りで、従業員満足度が低い会社では、離職者が増え、生産性が低下し、企業の業績も悪くなるはずです。
ES調査で何がわかるか
ES調査で何がわかるか、という点について1つずつ見ていきましょう。

会社やサービスによって、項目が違う場合もありますが、大きく分けると以下のような感じです。
それぞれの質問項目に対して、ES調査の提供元によっても異なりますが、5段階で一番近いものを選ばせる形などがあります。
基本情報
ES調査は、原則として匿名で行う調査です。調査に答える従業員の属性や年齢、部署などについての質問をします。
具体的には、以下のような質問です。
- 性別
- 年齢
- 勤続年数
- 部署
- 役職
キャリア形成、人材育成
キャリア形成や人材育成制度についての質問です。従業員が自社でのキャリアデザインや成長についてどう考えているかがわかります。
具体的には、以下のような質問です。
- 意欲を引き出したり、キャリア形成に役立つ教育が行われている
- 若いうちから将来の進路を考えて人事管理が行われている
- グループや個人ごとに、教育・訓練の目標が明確にされている
- 誰でも必要な時に必要な教育・訓練が受けられる
- (自社では)従業員を育てることが大切だと考えられている
- 昇進や昇給の頻度は適切である
人間関係
常に離職率の上位理由になっている人間関係についての質問です。ここで不満感が多いと、離職率の高い会社になってしまう可能性が高くなってしまいます。またメンタルヘルスやパワハラなどのリスクも見つけられるのではないでしょうか。
具体的には、以下のような質問です。
- 上司は仕事に困ったときに頼りになる
- 上司は部下の状況に理解を示してくれる
- 上司や同僚と気軽に話ができる
- 上司と部下が気兼ねのない関係にある
- 上司は仕事がうまくいくように配慮や手助けをしてくれる
組織風土
会社全体の風土、雰囲気に関する項目です。
具体的には、以下のような質問です。
- 社内の人間関係は良好である
- 意見やアイデアを言いやすい雰囲気である
- トラブルが発生した時は周りがサポートしてくれる
会社について
会社全体や経営者に関する質問です。
具体的には、以下のような質問です。
- 会社の理念やビジョンに賛同できる
- 経営方針は随時知らされており、理解している
- 会社の業績は安定している
業務について、仕事の裁量性
従業員が、自分にどのくらいの裁量を与えてもらっていると感じているかについての質問です。やりがいにもつながる部分ですが、逆にプレッシャーになってしまう部分でもあります。また業種によって、一部偏りがあることもあります。
例えば、マニュアルが絶対必須の業態などでは、裁量というのはなかなか与えづらいでしょう。
具体的には、以下のような質問です。
- 今の仕事はやりがいがある
- 自分の新しいアイデアで仕事を進めることができる
- 仕事の目標を自分で建て、自由裁量で進めることができる
- 自分のやり方と責任で仕事ができる
- 仕事の計画、決定、進め方を自分で決めることができる
- 自分の好きなペースで仕事ができる
処遇
給与や手当などに対しての質問です。
具体的には、以下のような質問です。
- 世間的に見劣りしない給料がもらえる
- 働きに見合った給料がもらえる
- 地位にあった報酬を得ている
- 給料の決め方は公平である
社会とのつながり
自分の仕事がどれだけ社会の役に立っているのか、社会的な地位はどうか、といったことについての質問です。
具体的には、以下のような質問です。
- 自分の仕事はよりよい社会を築くのに役立っている
- 自分の仕事が社会とつながっていることを実感できる
- 自分の仕事は世間から高い評価を得ている
- 自分の仕事に関連することが、新聞やテレビによく出る
- 今の職場やこの仕事に関わる一員であることを誇りに思っている
業務負荷
業務不可に関する質問です。ここが適切でないと、過労死など重大な問題に発展する可能性もあります。
具体的には、以下のような質問です。
- 勤務時間や残業時間は適切である
- 仕事量は適切である
- 残業は無理のない範囲で収まっている
コンプライアンス
コンプライアンスについての質問です。
具体的には、以下のような質問です。
- 法令を遵守したうえで業務が行われている
- 機密情報が適切に処理されている
休暇・福利厚生
休暇や福利厚生などの給与以外の待遇面についての質問です。
具体的には、以下のような質問です。
- 夏季休暇や年次休暇がある
- 産休、育児休暇、介護休暇がとりやすい
- 有給休暇を取りやすい制度や雰囲気がある
- 心や体の健康相談に乗ってくれる専門スタッフがいる
- 心や体の健康相談のために、社外の医療機関などを気軽に利用できる
総合評価
上記の内容を踏まえたトータルでの評価です。
具体的には、以下のような質問です。
- 今の職場で働いていることに満足している
- 今後も今の職場で働き続けたい
- 友人や家族にすすめたい会社である
ES調査をするべき理由
ES調査をするべき理由ですが、以下のようなものが挙げられます。

現場の声を把握できる
ES調査は一般的にアンケート形式で行われます。
そのため、上司と面と向かって話した場合よりも、正直な意見を言うことが多くなります。
そのため、より実態に近い従業員の本音を知ることができるのです。
定量的かつ客観的な情報を得られる
ES調査では定量的、かつ客観的な情報を得られます。
どういうことかというと、従業員に何かを聞くときに、上司の聞き方やそのシチュエーションによって答えが変わってしまうといったこと、ご経験があるかと思います。
「全ての従業員に」「同じ聞き方」で調査をすることで、「データ」として使える情報となります。このちゃんとしたデータが得られることがメリットです。
また一部のいわゆる「声が大きな従業員」の意見が目立つ、といったようなこともありません。
例えば、とある発言力の強い従業員が、「○○をしたい」といった場合に、他の従業員はまったく逆のことを思っていたとしても、マネジメント層に届く声は前者のみといったケースがあると思いますが、ES調査であればそういったこともなく、客観的なデータを得ることが可能です。
得たデータを指標として、強い会社を作ることができる
ES調査で得たデータを基に、強い会社を作ることができます。
ES調査は従業員満足度なので、従業員が満足しているかどうか、何に課題を持っているのかといったことを把握することができますが、職場に対して満足している従業員と、そうでない従業員のどちらが一生懸命働くでしょうか?
従業員満足度が上がることで、結果として強い会社になり、業績の成長につながってくるのです。
ES調査の種類
ES調査の方法としては、大きく分けて以下の2つの方法があります。
アンケート調査
ES調査の場合は特に一般的なのはこちらのアンケート調査ではないでしょうか。
原則として従業員全員に、あらかじめ用意した質問に回答してもらいます。
匿名で大人数の調査を、環境に応じず行えるため、素直に回答してもらいやすく、調査結果の信ぴょう性が高いです。
半面、用意した質問に回答する形なので、その回答に至った原因や背景を調査することはできません。
ペーパーで行うものや、インターネットやアプリで行うものなどがあります。
インタビュー調査
ES調査の手法としては、インタビュー形式で行う方法もあります。
従業員に直接ヒアリングを行うため、回答の背景や原因を聞くこともできます。
ただし、とても時間がかかるため、従業員数が多い会社になると、全員に対して行うのは時間とコストがかかります。
また、匿名ではないため、率直な意見を聞くことができない可能性もあります。
自社の人事部の人間が行うものや、人事コンサルタントなどの外部に委託する方法などがあります。
ES調査は自社に合った方法で
ES調査については、上記で挙げたようにかなり質問項目にバリエーションがあったり、やり方についても、自社で行うものから外部に委託するものまで、様々なやり方があります。

大切なのは、「何のためにES調査を行うのか」という前提をしっかり決めて、自社に合ったやり方で行うことです。
自社にとって必要な質問項目が入っているか、ということや、果たしてインタビュー形式でいいのか、自社内で行うことで正確な分析ができるのか、など。
ES調査は自社に合った方法で行ってください。
最後に
ES調査とは何か、わかる項目ややるべき理由などについてご案内しました。
「いま御社の従業員満足度はどのくらいですか?」
と聞かれたときに、明確に答えられる経営者やマネージャーはそんなに多くないと思います。
なんとなく「まぁまぁいいんじゃないかな」とか「最近はあまりよくないかも」くらいの答えになってしまっては、経営のリスクに気づくことができなかったり、成長のチャンスを逃してしまいます。
従業員満足度については、経理の記録や大切な商談の記録同様、定期的に調査を行い、分析をし、課題を明確にすることで、次の戦略につなげていくことが重要です。
ぜひES調査を活用するようにしてください。